断崖のアイ
「戻ってきなさい」

「戻らないとは言っていません」

「ならば、今すぐに戻りなさい」

 対峙するベリルとライカンスロープを見つめたあと、アイアスに向き直り一度、目を閉じた。

「解りました」

 応えて、きりりと吊り上げた目にアイアスは手を揚げる。するとライカンスロープは唸るをやめてアイアスの足下に駆け寄った。

「ベリルを捕らえることを諦めた訳ではない」

「解っています」

 ユーリは眉を寄せ、無言のままこちらを見つめるベリルと視線を合わせた。

 そうして、立ち去るアイアスの背中をゆっくりと追い、ベリルだけが残された──

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