断崖のアイ
 それを確認し駆け寄って棍を振り下ろす──

「!?」

 右腕を盾にするように揚げた事に驚いたが、棍の勢いは止められない。右腕は複雑骨折を余儀なくされるだろう。

 そう考えていた青年の耳に、鈍い音が届いた。

「!」

 驚いて後ずさる。音と共に手に伝わった感触は、何か硬いものだ。

 彼はエメラルドの瞳を無表情に輝かせ、袖に手を入れるとそこからナイフが姿を現した。なるほど、上手く身を守る用途にも使っている……と感心する。

 しかし、リーチからもこちらが有利なのは明白。相手に気負うなと自身を奮い立たせ、体制を整えて再び駆け寄る。

 左脇腹めがけて振り下ろした棍は、逆手に持ったナイフの腹で防がれた。彼は確実にこちらの攻撃の先を行く。それに思わず舌打ちが漏れた。

「若いな」

 ぼそりとつぶやいて青年の棍をナイフの刃で受け止めると甲高い音が響き、続けてその刃を強く流した。

「!?」

 飛び散る火花に一瞬、たじろいだ──その視界に入った彼の瞳に魅入られたように動けなくなる。
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