断崖のアイ
「っう!?」

 ナイフの切っ先は首元に突きつけられていた。息を呑む青年をしばらく見つめると、静かに口を開く。

「筋は良い。だが技に頼りすぎだ」

「なんだと……?」

「経験が浅い」

 たったこれだけの手合わせで全て見抜かれた。喉が詰まって言い訳すら出てこない。自分より小柄な相手が、なんと大きく見えるのか……

 そんな青年にふいに背中を向けて去っていく。

「!?」

 逃がすまいと懐からハンドガンを抜いて銃口を向けた。独特の金属音に視線だけを青年に移す。

「ホローポイントか」

「!」

 弾薬の種類を言い当てられて体が強ばる。それに意に介さず再び遠ざかった。

「当たらない」という確信があるのだろうか、彼の歩みには少しの動揺も感じ取れず青年は諦めたように銃口を降ろした。
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