断崖のアイ
 清潔な通路を抜けていくとスライドドアが数枚2人を出迎え、4枚目をくぐって立ち止まった。

 上部と左右から風が舞い、くまなく届くように腕を少し上げる。そのあと目の前のドアではなく、右手のドアをスライドさせて滑り込む。

 壁の一面がガラス張りになっており、中の様子が窺えるようになっていた。全身を防護服で包んだ十数の影がゆっくりと広い室内を動いている。

 酸素の供給を行っているチューブが腰に接続されているため、早い動作が出来ないのだろう。慎重な作業を続けなければならない状況にあって、好都合なシステムともいえる。

 ベルハースは手元にある小型のタッチパネルを操作したあと口を開く。

「No.6666だ」

 マイクで室内に流された声に1人の影が反応し移動を始めた。

 ずらりと並べられている大小の水槽を一瞥していき、その一つを抱えて近くのデスクに移す。30㎝四方の水槽を小型カメラが数機、取り囲み微かなモーター音を上げながら見つめていった。

「! 成長が速いな……」

 ガラス張りの壁に映し出されている映像を確認して発した。

「生命体として確認したのはつい先日でしたが、すでに妊娠5ヶ月の胎児ほどに成長しています」

 これほど急速に成長した素体(そたい)は初めてだ。ベルハースは映像を見つめながら己の内から語りかけて来る声に口元が緩み、体を震わせた。
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