とある青年の懺悔
敬語はよく使うから慣れてる。


…が、問題はそこじゃない。


俺には、愛想というものが取り入れられていない。


俺が、取り入れようとしないだけなのかもしれないが。


結果、相手に悪印象を与えてしまう。


これでは駄目だろう。


今のうちに愛想笑いとか、覚えておいた方が良いのだろうか?


自室にある全身鏡の前に立ち、指で口角をあげ、笑顔の練習をしてみる。


その時、ドアの向こうから母の声がした。


「樹紀ー!準備出来たの?早く用意して。そろそろいらっしゃる頃だから」


口角から指をパッと離す。

無表情に戻った後は、洗い立ての白いシャツ、スキニーに汚れがついていないか、鏡の前で回転しながらチェックする。


最後にかけている黒縁メガネのブリッジを押して、ドアに向かって歩き出した。
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