僕は父上の妻が欲しい。

「私の賭けるものは・・えっと、昨夜縫った刺繍でよろしいですか?」

「じゃぁあの・・俺は砂金も先ほど使ってしまったから・・賭けるものがないんですけど・・」

「砂金などもう結構です。では・・その上着を賭けて下さい」

「上着・・ですか?では負けてしまえば俺は着て帰るものがなくなります」


「負けることなど考えないで下さい。勝てばいいのですから」

そうして男の人は渋々上着を賭けると

「盤双六」が始まった。


(ん、この人・・結構強いかも)


「おい、時子殿と清盛殿が勝負しているぞ!」

「いい勝負ではないか。久々に時子殿の負けを見れるかもしれない!皆!清盛殿を応援するのだ!」

この男の人・・‘清盛’というのか。

整った顔をちらりと見ながら思った。

野次馬たちが集まって

私達のまわりには声援が飛び交った

「頑張れ!清盛殿!」

「時子殿を負かすのだ!」


でも残念なことに

私が勝ってしまった。


「あーっ!やっぱり時子殿には及ばぬか・・」

野次馬たちはそう言って戻っていった。

清盛、という男の人は

悔しそうに唇を噛んで言った。


「・・・名は?」


「平時信の娘、平時子と申します」


そう笑顔で言って、

私は彼の上着を取り上げた。


そうして時間がたち

夜も更けて、彼がその姿で帰ろうとしたとき
私は哀れに思って

「これ・・」

と、さっき取り上げた上着を差し出した

彼は少し驚いた後
嬉しそうな顔でそれを受け取った。

「ただし、後日、また私の元へお返しくださいませ」

「・・・」

彼は私を少し睨んだ。

だって、

そう言ったら、また彼に会えるじゃない。






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