異本 殺生石
 そう言って玄野はリュックを開き中からまず10センチ四方ぐらいの鏡のような物からコードが伸びている妙な機械を取り出した。明雄はそれを手にとって点検し、指でOKのサインを作った。
 次に玄野は金色の小さな棒が数本入った小さなビニール袋を取り出し明雄に手渡す。明雄はそれも一目見て大きくうなづいた。陽菜は横から首を突き出し明雄に尋ねた。
「兄さん、それ何よ?」
「こっちは太陽光発電式の僕のタブレットコンピューターの充電器だ。日本の歴史のたいていの事はそれで分かるからな。こっちは見ての通り、金の板だ。過去の世界に行くとなれば現代のお金は使えない可能性が高いからな。まあ、二万円分程度の金だけど、昔になればなるほど値打ちがあったはずだ」
「はあ、さすが兄さん。あたし、そんな事全然考えもしなかった。で、玄野、後は何が入ってんのよ?」
 玄野はリュックの口を大きく広げて陽菜に見せた。
「まずは食料だな。乾パン、ミネラルウォーター、あと缶詰」
「で、缶切りは忘れたとかベタな事は言わないよな」
「え?あ、あはは……わりい、ある?」
「ああ、いいよ。うちのを持ってきてやる」
「それと防災用の毛布、この銀色の薄いやつ。ま、こんなとこ」
「ううん、いいけど。フーちゃん、こんなに乗る、あのタイムマシンに?」
 フーちゃんはリュックを一瞥して即答した。
「うん、大丈夫。あれは四人乗りだし、座席の後ろにそれぐらいのスペースはあるよ」
「よし、じゃあ、いざ時間旅行に出発!」
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