異本 殺生石
 委員長が歩き去った後、陽菜は床に座ったまま視線を上に向けた。そこには何の変哲もない初夏の空があった。フーちゃんがいつも飽きもせず見上げていたのと同じ空が。
 陽菜は思った。自分に出来る事なんて所詮たかが知れているだろうけど、この国には玄野や兄さんや委員長みたいな人間がいる。きっと大勢いる。そのみんなが一人一つずつでも「些細でちっぽけな」何かを変えてくれたら、ひょっとしたら「歴史の大勢」とかいう物を変えられるかもしれない。
 FDなんて悲しい存在が生まれて来なくても済む未来が来るように歴史が変わるかもしれない。フーちゃんが普通の女の子としてまた生まれて来られる未来がやって来るかもしれない。いや、きっとそうなる、そう信じよう!
 陽菜は青い空を見上げながら心の中でこうつぶやいた。

 だからフーちゃん、その時は安心して、またこの国に生まれておいで。

(注:この作品に登場する「FD症候群は」100パーセント作者の空想の産物であり、いかなる科学的根拠、歴史的前例も存在する物ではありません。)
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