ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
ラッシュ時のホームの様子しか知らない純にとって閑散とした列車のホームは何時もと違う様相を見せ少し新鮮に感じられた。子供を連れた母親、仕事の途中で有ろうか、スーツ姿の二人連れや老人達。町は時間が変わるだけで、違った様相を見せる。そして自分のこれからの人生に対する漠然とした不安……しかし、しのぶと二人なら乗り越えられるとも思った。

          ★

待ちあわせの時間は空しく過ぎた。

約束の時間にしのぶは現れなかったのだ。純の脳裏に不安がよぎる。不測の事態に巻き込まれたのではないか。思い始めると思考を止める事が出来なかった。純はしのぶの、あの迷路の中の家に急ぐ。しのぶは迷路から出る事が出来た筈だ

……そして…

何時も通りに視界は突然開け何時も通りにしのぶの居る家はそこに有った。
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