空しか、見えない
「みんな、おしゃもじぶら下げてるっていうのがな、お前たちの学校のは変わってるよな」

 すでにブルーのパジャマに着替えた父が、一緒に写真を覗き込んでくる。ちなみに父の学校でも遠泳はあったが、赤いふんどし姿だったそうだ。
 アルバムを取りに、佐千子はひと月ぶりに実家に戻った。母が心臓発作で他界してから、すでに2年になる。本当だったら長女の佐千子はすぐにでも実家に戻るべきだったが、「もうすぐ実現するはずの夢」を抱えたまま、結局、ひとり暮らしを続けている。
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