空しか、見えない
 久しぶりに会ったサセに、忘れていたはずの愛おしさがあふれた。静かな口調で、しゃしゃり出てくることがなく、それでいて胸に秘めた確かな思いがある。黒目がちの瞳が、何も言わずにそれを語っている。

「環? ちょっと相談してもいいかな」

 ハッチの頃から、サセはそんな風に首を傾げて物事を静かに訊ねてきた。
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