空しか、見えない
 もう、寝るばかりの姿なのに、どうしたらいいのだろう。
 玄関のドアを開けたまま戸口に立っていると、上がってきたエレベータの扉が開き、降りてきた男の足音が響き始めた。
 足音は人によってそれぞれ違う。のぞむは、いつものんびり歩いた。環の歩き方はいつもはつらつとしていると感じていたが、マンションでもこつこつ音が響く。

「ねえ、本当にどうしたの?」

 目の前に、革ジャンを着て首にマフラーを巻いた長身の環が立つと、少し怖いとサチは感じた。
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