空しか、見えない
 ルーはキッチンペーパーで手を拭い、コンパクトなデジカメで写真を撮る。息子だけ撮っているのかと思ったが、

「のぞむ、いい顔している」

 と言うから、ふたりの写真を撮ったのだろう。
 ルーは、働き者だ。こうして食事の支度をしている間に、洗濯機も回している。部屋の中を片付け終えると、それから身支度をして、夜勤に出るはずだ。洗濯くらいなら代わると言っても、ルーは納得しない。
 自分が甘え過ぎなのはわかっているけれど、いつしかずるずると、ただのルームシェアを越えた家族のような生活に突入している。
 病気の療養が長引くうちに、のぞむは、自宅でルーの子どもの世話を引き受けるようになった。その分、のぞむがしていた夜勤仕事の穴を、ルーが埋めてくれている。元々、働いていたラーメン店は、ルーの紹介で入った店だった。
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