空しか、見えない
〈やっぱ、遠泳は開催になったよ。なんと、真打ち登場、フーちゃんの彼氏です〉

 まゆみは、みんなの様子をじっと見ていた。頼まれた環のお替わりを出しだすと、手を拭った。
「あの」と、カウンターの内側からまた、声をかけてきた。

「今日は皆さんに口を挟んでばかりですけど、遠泳、もうひとり混ぜてもらえないですか?」

「っていうと?」

 環が、訊ねる。
 するとまゆみは、先ほどの吉本の真似をして、自分の鼻先に突き立てるように指を向けた。

「私です」

「ひぇー」と、言いながら、千夏はふたたびiPhoneのラインの画面を出し、こう打った。

〈真打ちは、もうひとりいました。まゆみさんだよ!〉

 そう書いて、親指を突き出したマークのスタンプをひとつ、千夏は送信した。
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