空しか、見えない
 まだのぞむと仲が良かった頃、夏も過ぎた初秋の一日、彼がいきなり「なあ、サチ、久しぶりに岩井まで行ってみない?」と、誘ってきた。のぞむが運転免許を取ってはじめてのロングドライブで、彼の父親の古いセドリックの助手席に乗っている佐千子は、ずっと手に汗を浮かべたままだった。岩井へ着くまで、3時間はかかり、のぞむの運転ではいつまでも到着しないような気持ちになった。確か岩井へ着くまで、カーステレオから流れていたお父さんのCDが繰り返しリフレインしていたはずだ。昔のフォークソングばかりが収まったオムニバスだった。
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