空しか、見えない
 そこに誰がいるのかは、もうわかっていた。千夏や、マリカが、窓越しにおしゃべりを始めた。下にいるふたりの声まで、もう届き始めていた。
 けれどすぐには、下を見られなかった。環の優しさが、そのまなざしを通して佐千子の身に染みた。
 彼はそのまま部屋を出て、彼らを迎えに階下へと降りたようだ。環に続いて、芙佐絵やマリカたちも降りていった。
 佐千子は深呼吸して、それからゆっくり窓の下を見た。
 純一は、すでに皆に囲まれている。足下には、ゴスケまでじゃれている。
 背の高いのぞむが、こちらを見上げてぽつんと立っていた。佐千子と目が合うと、表情を柔らかく綻ばせ、やがて頭の上で大きく手を振った。
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