フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「恨んだりしないわよ。でも、私、本当にくじ運がないの。どうしよう、凶だったら」


ぐずぐずする私を、


「東子さんはぼくよりずうっと年上なのに、憶病なんだね」


ハルが挑発してくる。


「そんな事ないわよ!」


「そうこなくっちゃ。じゃあ、せーので開こうか」


「いいわよ」


「じゃ。せーの」


同時に、カサカサカサカサ、おみくじを開いた。


「「あっ」」


声が重なって、同時に顔を上げて、同じタイミングで交換した。


「「大吉!」」


「すごい! 大吉なんて初めて見たわ」


だけど、ハルはあまり嬉しそうに見えなかった。


「……何だ、これは」


次第につまらなそうな顔になって、みるみるうちに難しい顔になった。


「大量生産じゃないか」


眼鏡をくいっと人差し指で持ち上げて、溜息交じりに言う。


「まったく同じ事が書いてあるじゃないか」


これは一種の詐欺だ、とハルは言い、2枚のおみくじをぴたりと重ね合わせ、上弦の月にかざした。


「運勢、大吉」


ハルが読み上げる。


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