フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「ハル! ハル!」


困る。


不安で、焦った。


ハルが居ないと困る。


なぜか、そう思った。


また、ひとりになってしまう。


探さないと。


焦って駆け出そうとした時、腕を掴まれた。


「どこに行くの?」


ハル。


「ハル! どこに行っていたの! 急に居なくならないで!」


「何、怒っているのさ」


「怒っていないけれど」


怖かったのよ。


ハル。


あなたが消えてしまったのではないかと。


怖かったのよ。


今日までの奇妙な1週間が、嘘だったのではないかと。


「ちゃんと言ったじゃないか。聞いていなかったの?」


「え?」


ぼうっとしていたから、何も覚えていない。


「買ってくるからここで待っていてって言っただろ。そうしたら、東子さん、うんて言った」


ほら、これ、一度引いてみたかたんだ。


と、おみくじを見せてハルが笑った。


「……ごめんなさい。私、ぼうっとしていて」


覚えていない。


それで、気付いたらハルがいなかったから。


突然現れた人だから、突然消えたのかと思って。


「ねえ、東子さん」


手を出して、とハルが言う。


手のひらを差し出すと、ハルがぽとりとおみくじを落とした。


「東子さんのぶんだよ」


「私のぶんも引いてきたの?」


「うん」


結果が悪くてもぼくを恨まないでね、とハルが笑った。
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