フィレンツェの恋人~L'amore vero~
まず、サン・ジェルマン・デ・プレ教会から路線番号96のバスに乗って、ポン・ヌフという橋で降りる。


そして、右岸へは渡らずに橋の中心に立っているアンリ4世の騎馬像前で待っている事。


すると、そこに僕の親友が来るからね、一緒に右岸に渡って街を見て回ると良い、とパスカルは言い、メモ帳にその人物の名前と携帯電話のナンバーを書いてくれた。


【Kou Takatsukasa】


「コウ……タ、カ、ツカ……サ?」


私が首を傾げて見せると、パスカルはそのアルファベットを人差し指でつつとなぞりながら頷いた。


「Oui」


今日はコウが華穂のボディーガードさ、と。


「Oh! Kou! (ああ! コウね!)」


私の強情さに呆れ果ててソファーに沈んでいたはずのジョゼットが、


「C'est une bonne idee! (それは名案だわ!)」


パン、と手を叩き鳴らして、生き返ったように飛び起きた。


「Would? (だろう?)」


パスカルとジョゼットがハイタッチして盛り上がっている横で、私は「Non……」と首を振った。


「Non,Kaho. ll y a beaucoup de touristes a paris. (パリにはたくさんの観光客がいる)」


パリは君が思っているほど安全な街じゃないよ、でも、とパスカルは続けた。


僕の親友は完全に安全だよ、と。


「Kou suis japonais. (コウは日本人だからね)」


「……え……日本人……japonais?」


「Oui」


そうだよ、とパスカルはしっかりと頷いた。


日本人、と聞いた瞬間にまだ会ってもいないくせに不思議な親近感がわいていたのは事実だった。


コウが一緒なら何も心配要らないわね、ゆっくり映画を楽しめるわ、とジョゼットが胸を撫で下ろす。


「Qui? kou Takatsukasa? (コウ、はどんな人なの?)」


聞くと、ジョゼットはううーんと考えるジェスチャーをして、にっこり微笑んだ。
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