フィレンツェの恋人~L'amore vero~
ぺらぺらと滑舌良く、本当に楽しそうに、サエキジロウはハルの性格を話すのだから。


まるで、愛する我が子の自慢、あるいは、可愛くてたまらない孫の話をするかのように。


「父親のような顔をするんですね、サエキさん」


クスクス笑うと、サエキジロウは「あ」と頬を赤らめた。


「いや、これはお恥ずかしい。なにせ、あの方が幼き頃からの長い付き合いでございまして」


「そうですか」


「好きな食べ物、でございましたね」


と、サエキジロウはにっこりとほほ笑む。


「ええ。今日はクリスマスでしょう? せっかくなので、料理しようと思って。久しぶりなので自信はないけれど」


「それはいい。是非、お願い致します」


ハルの親友、サエキジロウが教えてくれた。


ハルが好んで飲んだり、食べる物。


苦い苦い、スプレッソコーヒー。


ジンジャーエール。


パニーノ、という生ハムやレタスやチーズをパンでサンドし、焼いたもの。


フィットチーネという平たいきし麺のようなパスタに、酸味の強いミネストローネ。


ハルが好む物。


「あのお方は、食通でございます。お味には少々厳しいかと」


フフ、と悪戯にサエキジロウが声を漏らして笑った。


「頑張ります」


苦笑いした私を、サエキジロウは大粒の瞳でまじまじと見つめて来た。


肌に穴が空いてしまいそうなくらい。


「あの……?」


「東子様」


「はい」


「あなたがとても良い方で、本当に良かった」


いいえ、と私は首を振った。


「私は、サエキさんが思うような人間ではありません」


だけど、せめて、ハルを悪いようにはしないと思う。


「いいえ。あなたは良い人です。昨晩、あの方を拾ってくださった。救ってくださったではないですか」


「救われたのは私の方です。昨日、ハルの存在が、私を救ってくれました」


だから、せめて。








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