恋のソリューション
ドキン、と胸が高鳴る。

そこに立っているのは、間違いなく、第3チームのリーダーの陣野 弘貴(じんのひろたか)さんだった。

180cmのすらりとした体を、仕立てのいい濃紺のスーツに包み、背筋をピンと伸ばして立つ姿は、いつ見ても隙がない。
ネイビーとシルバーのストライプのネクタイをきちんと締めた姿は、いかにも仕事ができる男って感じだし、ななめに下ろした前髪の下の眼差しは今日も涼しげで、知性がにじみ出ている。
爽やかに、でも隙なくセットされた黒髪も、やや薄めの唇も、私の好みど真ん中で、ため息が出る。

だけど陣野さん、ずっとクライアントの会社に常駐しているから、めったに本社には来ないんだけどな。その人が、今ここにいるってことは。
……ひょっとして、ひょっとする!?

いや、ただの偶然かもしれないし、あまり期待しない方が違った時にショックが少なくてすむよね。
それでも、淡く期待してしまうのは、どうしようもなくて。

胸を高鳴らせながら名護屋さんの前に歩いて行き、陣野さんに軽く会釈してその隣に立つと、名護屋さんがニコニコと笑顔を向けてきた。

「阿久津ちゃん、待たせて悪かったねー。やっと決まったよ、阿久津ちゃんの受け入れ先」

首を長くして待っていた言葉に、思わず隣の存在を忘れ、前のめりになる。
「本当ですか? ありがとうございます!」
「陣野のことは、知ってるよね?」
聞かれて、隣の陣野さんの横顔をあらためて仰ぎ見て、「はい、もちろん存じてます」とうなずく。
すると、名護屋さんは勿体をつけるようにひと呼吸おいてから、重々しく告げた。

「今日から11月末まで、第3チームの応援を命ずる。後藤物産に常駐してのデバッグ作業だが、やってもらえるな?」

やった、予感的中! 期待した通りだ!

「はい、もちろんやらせていただきます。よろしくお願します!」

頭を下げながら、つい頬が緩みそうになるのをこらえる。
また陣野さんと働けるんだ! 嬉しいっ!
陣野さんにも向き直り、頭を下げた。

「よろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく」

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