初恋プーサン*甘いね、唇

「ほんとに心配した」


「うん。ごめんね」


「ショックで気絶しちゃうなんて。そんな体質だって知らなかったもんだからさ」


「……私も知らなかった」


自嘲気味に笑いながら、半分ほど飲んでテーブルへ置く。


まさかの消極的性格と打たれ弱さの合併症に、誰あろう私自身が一番驚いていた。


今まで身体だけは強いと思っていたけれど、心がダメージを受けると連鎖的に影響が出るんだなと、他人事のように妙に感心してしまう。


「ねえ、雛子」


「うん?」


「ほんと、ごめん」


今度は美咲が謝った。


耳を折りたたんだウサギのように、眉尻を下げながら。


「どうしたの?」


「積極的になれとか、ああしろ、こうしろなんて言って申し訳なかったなって。みんな自分と同じようにアタックあるのみ、なんてタイプじゃないもんね」


「なんだ。そんなこと――」


言葉をさえぎって、美咲は独り言のように続けた。


「あたしってそういうところがダメなのよ。無理強いしていい人と、いけない人がいるのよね。マスターや博美さんの言う通り、からかってただけなのかも。ほんとにごめん」


下げた頭をあげても、美咲の眉尻は戻らない。


いつもの彼女らしからぬ表情が余計心に届いて、思わず涙腺を2、3回ノックした。


今にもこぼれそうな涙を、目の端にぷっくりと溜めて堪える。



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