初恋プーサン*甘いね、唇
目の前にした途端。
さっきまでの異常な勇気が、指の間をすり抜ける砂のようにこぼれ出した。
まるで、長い時間妄想し続けて、やっと我に返ったように。
「いや、呼び出しだとかはいいけど……。でもビックリしたよ。店長に『ウィっていう名前のアジア人が来ているぞ』って言われたから。そんな知り合いいたっけ、と思って」
「……へっ?」
――しまった!!
さっき耳にした宇宙語は、「待ってて」じゃなくて、「名前は?」という意味の言葉だったようだ。
間違ってウィと返事をしたばっかりに、私の名前はウィになってしまっていたらしい。
「ご、ごめんなさい……っ」
「いいんだ。謝らないで。迷惑だったわけじゃないし」
「はい」
それより、と彼は帽子を取った。
「どうかしたの?」
「あの、いえ、その……」
言い淀んでいると、彼が先に口を開いた。
「手紙の返事を、直接言いに来てくれたの?」