初恋プーサン*甘いね、唇

「だったら、その切ないため息は何?」


「土曜日のことを考えると、胃が痛くって」


「は?」


「やっぱり私、自信ないよ」


「アンタ、好きな人のことで胃痛起こしてどうすんのよ」


「そうだけど……」


「おかしな話ね~」


本当に、おかしな話だった。


大好きな人のことを思って「胸」が苦しくなるというなら分かるけれど。


大好きな人のことを思って「胃」が苦しくなるなんて。


放散痛じゃあるまいし。


今まで聞いたことがない。


やっぱりこれは、処方を誤った副作用なのだろうか?


「ずる休みしちゃダメだからね。逃げは許さないから」


美咲はきつく釘を刺し、口を開こうとした私に間髪入れず念を押した。


「杏奈ちゃんだって、毎週欠かさず来てるんだし。ただでさえ先を越されてんのに、ここで逃げたら何馬身も引き離されるよ」


「うん……」

< 67 / 201 >

この作品をシェア

pagetop