初恋プーサン*甘いね、唇
ここまで見透かせるのかというほど言い当てられ、私はぐうの音も出ずに押し黙った。
元々観察力はあると思っていたけれど、ここまで鋭いと怖いくらいだ。
誰にも情報を盗めない鉄壁の心の内を、ことごとく知られるのだから。
彼女には、ここの仕事より、霊視とかの職業が似合っている気がする。
「図星みたいね。ま~この美咲様から見れば、アンタの心はトランスルーセント・グラスキャットと同じよ」
「何それ」
「少し前に飼い始めた、小型熱帯魚の名前」
「また魚に例えるし……」
彼女は凝っている熱帯魚の話をいつもしていて、例え話をするとき、たまにこういう変な名前を出す癖があった。
ほとんどが舌を噛みそうな名前ばかりで、聞いているこっちは意味が分からないので、比喩として成立してない気がするんだけど。
「絶妙な例えよ。全身が透明な熱帯魚でね。ナマズの一種」
「ナマズと一緒にされてもなあ」
複雑な気分で肩を落とすと、美咲は喉を鳴らして笑った。
「いいのいいの」
「はあ」
私は気を取り直して、書架の整理をしようとカウンターを出た。