トルコの蕾
20年前。
自分の父親が本当の父親でないと知ったのは、太一が7歳のときだった。
知ったと言ってもそれまで両親に嘘をつかれていたという訳ではない。
第一、太一の家には昔から、亡くなった『パパ』という人物の写真が仏壇に飾られていたし、太一は自分が『父さん』と呼んでいる人物が他の友達の『父さん』とは違うということに薄々感づいていた。
太一も7歳になり、そろそろ本当のことを話しても良い時期だと、両親からそう聞かされたのだった。
その話を聞いてからも、太一と『父さん』の関係は今まで通り順調で、よく男同士で釣りに行ったりキャッチボールをしたりしたものだった。
そんなある日のこと。
太一は父親に連れられて、ふたりきりである場所を訪れた。