トルコの蕾






真希が窓の外を見る。



絵美が笑って指差した先には、見慣れたシルバーのキューブが止まっていた。



サイドガラスは曇って見えにくいけれど、運転席にいるのは間違いなく、真希が素直になれない相手、太一その人だ。




「店長?」



絵美が真希に声を掛ける。



「今日はわたしに後片付け、任せてもらえませんか?」



「…えっ?」



「じゃないと店長のサンタクロースが、寒さで凍えちゃいます」




絵美はそう言いながら、ロッカーから真希のバッグを取り出して、真希に手渡した。




「クリスマスの神様が、きっと店長の恋の味方をしてくれます!」




絵美がそう言うと、真希は黙ってバッグを受け取った。





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