+チック、
息を弾ませてカーブを抜けると、薄暗く小さなトンネルが見えた。

しかし、トンネルの手前には二台程の車が止まっていて何人かの若い集団がいた。
彼らは俗に言う肝試しというものをしているのだろう…この季節になるとこの辺りにはこういう目的の人達も増えるのだ。

私は少々不愉快に思いながら、花束を両手でギュット抱き抱えて彼らが去るのを待った。

折角彼に逢えるのに他の人がいるのは嫌だし、以前に何度か彼に逢う前に絡まれた事があるから他人がいる間にトンネルに姿を現すのはできるだけ避けたいのだ。
たぶん彼も同じようにしているだろう。

私は溜息を吐きながら、身を隠しつつその場にしゃがんだ。

スカートは短いし、上はノースリーブ一枚だけで短いくて薄い手袋をしているだけなので汗ばんだ体は小刻みに震えた。

もう夏が近いので息が白くなるという事は無かったが、それでもやはり寒かった…

自分の体を抱きしめるようにしながら目を閉じて時間が経つのを待った。百合の花はキツい匂いを端って私の感覚を麻痺させた。

どれくらい経った頃だろうか?

騒がしい叫び声と共に車のエンジン音がして車は私の前を通ってその場を去っていった。

エンジン音が聞こえなくなるとその場は ”慎” と静寂に包まれた。

自分の息遣いと、自分が踏みしめる枯れ葉の音が大きく聞こえた…
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