みだりな逢瀬-お仕事の刹那-
「俺のせいだって分かってんだよ。……普通じゃないってことくらい」
「なんで……そ、んなこと言うの!?」
「え?」
「楓のバカ!……信ちゃんの決意、踏みにじんなっ!」
たとえ友人でも、口出す権利はないと分かっている。でも、最後のひと言には我慢ならなかった。
「私も信ちゃんのご両親説得する!この人たちは幸せなんだって!」
純粋に互いを想い合う2人をずっと傍で見てきた。もはや家族も同然で、ひそかに尊敬しているから。
そんな彼らの苦しみに初めて触れて、何も知らずにいた自分にふつふつと怒りがこみ上げたのだ。
「ばーか」
立ち止まって拳を強く握り締めていると、伸びてきた指先でおでこにピンッと容赦ないデコピンをされた。
「痛いよ!」
「道ばたで叫ぶな」
「信ちゃんに言いつける!」
今も微かにひりひり痛みの残るおでこを押さえ、犯人を睨みつけながら鼻息荒く言い返す私。
「だから朱祢とは、友達になれたんだよ」
「え?」
その言葉に疑問符を返せば、フッと笑い穏やかな顔をした楓にまた面食らう。
「誰より大事だって、……初めて言われたんだ。もちろん俺も同じ」
「……当たり前でしょ!」
「何でそこでキレるわけ?」
まじまじ見つめていても、いつもの調子で返してくるデカわんこに溜め息を吐いた。
「ねー、楓ぇ」
「なに、今度は真剣な顔して」
そのマイペースな声とどこまでも澄んだ眼差しに毒気を抜かれ、あっさり頬も緩んでしまう。