みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


グラスを傾けながらカワイイ顔の彼を眺めると、鼻でフッと笑われた。


「惚れられたらどうすんの?――目の前の酒豪女に」

「はぁ?バカも休み休み言え。
ていうか、その文句も聞き飽きた」

「たとえ素っ裸でベッドに入っても、絶対に手ぇ出さないから安心してよ」

「考えただけでおぞましい!」

眉根を寄せる私とは対照的に、晴が運んで来たビールを淡々と飲む彼の温度差はいつものこと。


「うん、朱祢じゃ勃たない」

「失礼だっつの」

彼の発言にいつも、信ちゃんと“どっちがどっち役”なのか気になるところ。……幾ら聞いても、煙に巻かれている。


ちなみに私は終始、お湯か水割りの焼酎で通すのがお約束。ちゃんぽんすると飲みすぎるため、決まって悪酔いしてしまうから。


でも、毎回このお店でオーダーする焼酎が最高なのは言うまでもないこと。


ゆったりと落ち着いた時間が流れていくと、たった一夜の失敗が悔やまれてならない。


――大丈夫。社長にとっては暇潰しで、私も囚われたりしない。…それが誓いだから。



いつも通り他愛もない飲み会を終えた、その週末。食料品の買い物をした以外は、ひまわりんのお見舞いに晴の家にお邪魔しただけ。


ひまわりんの大好きな野菜のスイーツ店に立ち寄って、そのケーキを手渡した。


彼女はとても喜んでくれて、キュートな笑顔を貰えた私の方が癒される始末。…もうオバさんでも何でも、好きなように呼んでくれと叫びたいほどに。


実際のひまわりんは私を“ねえね”と言ってくれるから、その可愛さ無限大なんだけどね。


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