みだりな逢瀬-お仕事の刹那-


このソレイユで私に会った初めの時こそ、楓は警戒していたみたいだけど。


愛の形は人それぞれだと私は思っているし、仲睦まじい彼らを見ていると単純に羨ましい。



『本人が幸せならベストじゃん』

そう口にした途端、無表情のオトコに抱きしめられたのはさすがに驚いた。


ついでにマッチョ系の信ちゃんにもハグされて、あまりの力で窒息するかと思ったけど……。


そんな私も地味な自分を貫く仕事のストレス事情を知る、気の置けない友人が出来て嬉しかった。


本当は楽しい楓や信ちゃん、長年の付き合いの晴がいるから、今も仕事を続けられているといっても過言ではないのに。


その彼らに言えない関係を築き始めた私は、どれだけ薄汚れた心をしているのだろう?


アルコール度数の高いボトルもあっという間に半分以下となり、ほど良く体が温まってくる。


いい加減、焼酎オンリーは飽きたらしい楓はとうとう晴にビールを注文していた。


「ココにいる時くらい、メガネ外せば?」

料理もそこそこ食しながら、アルコールで日頃のストレスを浄化するのは至福の時。


そこで気になるのは、オンと切り離したい時にまで彼が掛けている伊達メガネ。


オサレな点は違うけど――楓と最も通じるポイントは、私的にここだと思う。


目も悪くないのにメガネに頼って、外部からの視線をシャットアウトしたがるから。


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