LOVELY☆ドロップ

そうして喜びの舞を披露する祈ちゃんを見つめていたあたしは、潤さんの一言でまた現実に引き戻された。


……運命ってなんて皮肉なんだろう。


これっきり二度と会わないだろうと思っている矢先に、あたしの住所を知られてしまうなんて……。


でも、あたしが今住んでいる場所は会社名義のものだ。

会社、クビになったし、場所を知られても、もうあそこには居られない。

気にするべきものではないかもしれない。



複雑な気分のまま、あたしは重い口をひらいた。

「春日1丁目16ー17番地です」


「う~ん、だったら車で送ろう。ここから徒歩だと30分はかかるからね」


「イノ、おきがえしてくる!!」

潤さんの言葉を合図に、祈ちゃんは自分の部屋へと駆け出した。


「え? 着替えるって……ちょっと待て祈!! お前、何を着ればいいのかわからないだろう?」

潤さんも祈ちゃんの背中を追って駆け出した。


ドタドタと忙しない足音があたしの耳をすり抜けていく……。


あたたかい感情がほんの一瞬芽生えるものの、次に潤さんや祈ちゃんと顔を合わせた時がお別れだと思い知れば、また胸が痛みはじめる。


だけどあたしはこれからひとりで生きていかなければならない。

誰の力も借りることなく、たったひとりでこのお腹にいる赤ちゃんを抱えて……。


それを考えると言いようのない苦しみが胸から喉へと這(ハ)い上がってくる。


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