LOVELY☆ドロップ

ふと不安になったけれど、祈ちゃんは満面の笑みを浮かべてあたしを見てくれている。

だからちゃんと笑えているんだろう。

内心ほっと胸を撫で下ろした。


「行こうか」


先を急ぐ潤さんの言葉があたしの胸を突き刺した。

祈ちゃんとのお別れの時間が来たんだと思い知らされる。


「え? もう? イノもおみおくりする!!」


「祈……」


潤さんが首を振れば……。


「やだやだやだ!! おきがえしていくの!! ね、ねね、ね、いいでしょ?」

そう言って、祈ちゃんはあたしの腕を離さない。

あたしは――といえば、本来は走って逃げるべきなんだろうけれど、あまりの吐き気のため、細い腕を振り払って逃げることもできそうになかった。

どうしていいのかわからず、途方に暮れてしまう。

頑(カタク)なな祈ちゃんを理解している彼に助け舟を出して欲しくて潤さんの顔を見れば、彼も困ったように眉をハの字にしてあたしを見下ろしていた。


これはどういう結果になるのか、祈ちゃんとは昨日限りの付き合いだけど、それでもよくわかる。


祈ちゃんと潤さんに自宅まで送られるケースだ。


「わかった、わかったから。祈も一緒にお姉さんを送ろう」

つまりは、そういうことになる。

「わあい」

祈ちゃんは我慢大会で優勝した喜びを体で表現している。

バンザイをしながらその場でクルクル回る。


「……そういえば、君の住所はどこ?」


< 105 / 266 >

この作品をシェア

pagetop