LOVELY☆ドロップ
静寂が生まれた先に残されたのはぼくと美樹ちゃん。ただふたりだけだ。
「何か飲むかい? ココアでも入れようか」
いたたまれなくなったぼくは沈黙を破り、椅子から腰を上げる。
「ねぇ、美樹ちゃん。ずっと家にいてくれないかな?」
いきなり告白というのはあまりにもおかしいと思い、そう切り出した。
だが、美樹ちゃんの顔を見つめることができない。
断られたらと思うと、初恋を知った思春期の子供のように胸が苦しくなるんだ。
ぼくは気を紛らわすため、片手鍋に注いだミルクをガスコンロに置き、火を点してあたためながら、テーブルの上に置いてあるココアの粉末が入っている青い缶のフタを開け、さっき母さんに告げたそのことを少しずつ口にしていく……。
彼女の返事を待つぼくの状況は、判決を待つ囚人のようだ。
早く何か話してほしいと焦ってしまう。
そんな思いも虚しく、ぼくの提案に対する返事は一向に返ってくる気配がない。
台所にはふたたび沈黙が広がり、片手鍋がコンロによって生み出された熱でミルクができたことを知らせる小さな泡の音ばかりだった。
いったいどうして返事がないんだろう。
コンロの火を止めたぼくは粉末のココアをマグカップに入れ、あたたまったミルクを注ぐ。
テーブルに置くついでを装って彼女を目で捉えると、美樹ちゃんは大きな目を丸くさせ、こちらを見てきた。