短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

しかし、これでもプロの端くれだ。ステージを途中で投げ出すわけにはいかない。
幸い、客席はステージから多少離れており、私の涙は聡介以外には気づかれていないようだった。

私はいよいよ声を張り上げる。

「肺の解剖なんて、できるわけないやろ!私は医者か!」

「お医者さんごっこやったんか。なんか、嫌らしいな」

私の気迫に、聡介も漫才を続けた。

「あーあー、話がさっぱり前に進まへんなあ!」


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