短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
雪音が恵一に引きずられるようにして連れて来られたのは、近所の不動産屋だった。
日没が迫り辺りは薄暗くなってきており、そろそろ閉店という雰囲気だ。
恵一は、店先に掲示されていた空き室情報をじっと見ると、そのうちの一枚をはがして店に入る。
「すみません、この物件貸してください」
店の奥でテレビを見ていた店主が、慌てて立ち上がった。
「は、はい。まずご覧になりますか?」
「いえ、結構です」
「入居希望は、いつからで?」
「今」