911の恋迷路
すぐ前に立っている陵のパーカーの袖をギュッと握る。
(力をちょうだいね、陵くん)
(言わなくちゃ…)
陵の代わりに伝えたかった。
陵が伝えるはずだったこと。
「陵くんが慎さんに送ったメールがあります。
読めば陵くんの兄弟への思いが分かると思います」
陵が健康なときに書いた手紙のようなメールだ。
稔に直ぐにでも読んでほしかった。
稔は少しためらってから、陵の携帯から受信メールを選んだ。
スクロールしてメールの全文を読み終えないうちに、
稔の険しい顔が崩れる。
(陵くん、りょうくんのメール見て稔さん泣いてるよ)
果歩は静かにたたずむ陵を見つめる。
そして祈る。
消えた記憶が少しでも戻ってほしい。
果歩だけでなくここにいる皆が願う。
今、険しい顔を崩して携帯に見入っている稔も、
陵と生活してきて、どんなに願っただろう。