911の恋迷路

 
 その男性は果歩のとまどいにイタズラっぽく笑って自己紹介をした。


 「陵の弟の慎(しん)です」



 (……へ?)

 
 果歩は、あんぐり口を開けたのだった。


 

 陵は生存していないかもしれない……。

 果歩は何時からか、陵の死の覚悟をしていた。実際には行方不明だけど、いなくなって久しい。

 
 生きていると信じて待つのは辛すぎた。


 
 (ふう……て!)


 真っ直ぐに果歩の目を覗きこむ慎の瞳。


 (こちらを見つめてくる…)

 陵の瞳に似ている気がする。
< 15 / 232 >

この作品をシェア

pagetop