911の恋迷路

 ただ、果歩は身をもって感じてきている。

 
 自分の心の一番大切な場所を占めていた人と、
 10年会えなかった。


 連絡さえ、取れなかった。

 それは陵からの拒絶だ。


 病によって果歩を忘れ去るという理由での、
 
 果歩の未来のための善意による拒絶でも。




 拒絶は、拒絶だ。


 拒絶の理由が悪意なら、どんなに苦しいだろう。
 拒絶する方も、される方も。



 「……携帯を持ち続けた慎が、まだ何か持っている気がして、
  怖いんですよ」


 電話口の稔は、最初に果歩と話した時よりも、ずっと優しく思える。



 (この異母兄弟が言葉を交わせる時間をもてたならば)



 絡まったお互いの思惑が、少しずつ解けていくと思う。
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