911の恋迷路

 「兄が処分したのかもしれません。
  ……これを見たとき、母親への土産ではないと思いました」

 指輪の内側に、小さな天然石が埋め込まれている。

 果歩は、光に透かしてその石をじっと見つめた。

 「兄に訊いても分からなくて、ずっと引き出しの奥にしまっていたんです。
  Kが誰なのか分かりませんでしたから」

 サファイアにしては色が薄い、と稔の話を聞きつつ果歩は思った。

 アクアマリンよりは濃いブルー。

 

 「携帯が、兄の携帯が手元にあれば、もっと早くお渡し出来たのですが」

 「すみません……」

 果歩の横から慎が詫びる。

 

 その声も耳に入らないかのように、

 果歩は熱心に指輪の内側を見ている。

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