マスカレード【仮面de企画】
俺の問いに美幸は呆れたように答えた。

「真面目に言ってんの? みんなタキシードに仮面よ?」

「くそっ! そうだった! 夜光、プリンセスには今誰が付いてる?」

「ジョッシュだ。プリンセスが子供の頃からのボディーガードだよ」

「お前も下に行け。俺はここからこいつに男を捜させる」


夜光はうさん臭そうに美幸を見た。


「大丈夫なのか?」

「俺も怪しい動きをしている奴をチェックする。無線で連絡するからお前はすぐに動ける場所にいた方がいい」


美幸はすでに仮面を剥ぎ取って下を見ている。

夜光は、いかにも渋々といった感じでホールへ下りて行った。


「悪いな、美幸。あいつは仕事熱心な熱血漢なんだ。ちょっとばかり暴走気味だが」

「いいよ、分かってる。家を出て最初に気づいたのはそれだから。よその人にわたしの目は理解できない――見る?」

「ああ、貸してくれ」


美幸は自分の髪の毛を何本か抜いて寄越した。

俺はそれを指に巻いて、柏手を一つ打った。

「眼(まなこ)開け」

言霊の力が俺に美幸の力を分ける。

視界が開けた。

人の姿の上に、靄(もや)のような物が見える。


「子供の頃はこうやって遊んだよな」


俺が言うと、美幸はホールに目をやったまま笑った。

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