千寿桜―宗久シリーズ2―
真実への誘導
雨音が、言葉を失った僕の代わりに静寂を埋める。









夫に殺された姫。





その心、その想いは、未練は……どこを漂っているのだろうか。






いや、でも……………。











何だろう。





釈然としない。








説明ができない。








自分の中に湧き上がる感情にだ。








僕はなぜ、その伝承に不確かさを感じているのか。





不確かさと言うよりも…疑問に近い。








否定するつもりは無い。



姫は、夫に殺された。



それは、後世に残された事実だろう。



その時代に生きてはいないから、それが事実だと書物に記されていれば、それが歴史となる。



どの歴史も、そういう経過で語りつがれていく。





将軍も、武士も、歌人も、全ての歴史上の人物もそうだ。







なのに、なぜ、こんなにも胸が疼くのか。







胸騒ぎ?




違う。







………痛い。





胸が疼いて………痛い。






苦しくて、切なくて……痛いのだ。






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