スピリット・オヴ・サマー
 とは言え、だまされたと気づいてみれば話は違ってくる。この夏のために、少々鈍ってきた体にも筋肉をつけた。つもりだ。少しは。このままでは、いや、すでに「ビーチもギャルもない」。
 昨日の夕食の献立ですら町内中に知られてしまいそうな、こんな閉じた田舎でこの夏を終えるかと思うと、目の前ではしゃぐマセガキ共が妙に憎々しげに見えてならない。
『でも、』
 憲治は水面の監視をしながら、ふと、思いを巡らせた。
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