スピリット・オヴ・サマー
「憲治さん。」
 憧子が呼ぶ。憲治が憧子を見る。憧子は遠い空の果てに目を泳がせながら、サイダーを一口、喉に通してやると、はあ、と息をついた。それから、
「ラポール、って言葉、知ってる?」。
「ラポール?…さあ、知らないな。」
「だと思った。」
 憧子は俯き、伸ばした膝をさすりながら続けた。
「どごまで、分がってけるがな(分かってくれるかな)。心理療法は分がるが?」
「あー、と。サイコ、セラピー?だっけ。」
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