スピリット・オヴ・サマー
 半泣きになって「聖菜」に近寄る憲治を、「聖菜」は悲しげにまつげを伏せて拒んだ。そして、そっと瞳を上げると、静かに言った。
『…今日、先輩が私にしてくれたこと、忘れません。きれいな思い出を、ありがとう…。』
 そう言って再び目を閉じると、「聖菜」は憲治が瞬きをする間に夏の夜の空気に紛れ、姿を消した。消える間際の、切なそうに伏せたまつげが、艶かしくもはかなげだった。
 憲治はその場に尻餅を付き、そのままへたり込む。
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