スピリット・オヴ・サマー
 この数日間、北中の校舎で過ごした時間は、憲治にとってこれ以上はない、「美しい時間」であった。それは、憲治が帰り着かなければならない「現実」を、必要以上に帰りづらいものにしてしまった訳である。
 憧子にとってそのことは「成功」であり「失敗」でもあった。
 夢見ることで過去を清算し、夢見ることでこの先を生きていけるように、憧子はそう思って憲治にヒトならぬモノのチカラを使ったのだが、憲治の深層心理をリアルにトレスするうちに、憧子自身が憲治の夢の中に取り込まれ、お互いに心を通わせてしまうことまでは、計算外だったのだろう。
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