森林浴―或る弟の手記―




「修介様が事故に遭われたそうです」


秘書の男は受話器を今にも落としそうでした。


そして、私はその後の記憶が曖昧なのです。


曖昧というより、断片的にしか覚えておりません。


病院のベッドの上に横たわる修介が息をしていなかったこと。


修介の遺影。


轢き逃げで犯人は捕まっていないこと。


覚えているのはそれだけです。





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