アナログ三姉妹


兄が遠ざかっていく。


妹たちは強く手を握り合い、


空いた手を振っていた。


振り向きもしない兄に向けて…。


マサが出演した夜、


「兄ちゃん、やっぱり行ってくるわ」


ご飯を食べ終わると兄は言った。


だからすぐ席を立ち、


洗い物に取りかかる。


「離れてても繋がってるだろう?」


「…うん」


「れいも岸山君も、みんな側にいる。こいつもな」


「ワン‼」


「だから大丈夫。兄ちゃん、産まれる時には必ず戻ってくるから」


「…」


もう、頷くことしかできなかった。


涙も洗えないのかな?


スポンジで拭けば、


この寂しさも乾けばいいのに…。


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