アザレア
それに気付いた時には全てが遅かった。


人を人として扱わなかった過去、親の名声に頼った傍若無人ぶり。

私が誠にしてきた言動は過ち以外の何物でもなく、立場が逆転した今だからこそ、漸く気付けた自分の鈍感さに、ほとほと呆れてしまう。


誠はずっとこうして自分の感情を殺して来たのだろうか。
私はこうしてずっと誠と言う人格を殺していたのだろうか。

だとしたら――誠が時折、私を荒く抱く事も納得できる。


嫌われて当然の事をして来た。

身をもって知る不快感に罪の意識は募るばかり。


声にならない声こそが本心で、私は立派な犯罪者。
身体を傷付けずとも、言動は凶器になりうる事を知る。
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