アザレア
『メイが、倒れた……?』

突然だった、連絡が入ったのは。
――息が止まるかと思った。


『それで、どちらの病院――はい、直ぐに向かいます』

こんな事になるなら、どんなに拒否されたって一人になんてしなけりゃ良かった。
一瞬でもメイから目を離してしまった自分の浅はかさに嫌気がさす。


同時に感謝もした。
それこそ浅はかだとばかり思っていた、過去の自分に。


そして駆け付けた病室で、ぽつんと隅に置かれたボストンバッグを見つけ――…


やはり“そう”だった。
嫌な予感は確信へと変わり、俺はやはり後悔する。

横たわるメイの青白い顔に残る涙の跡が、何一つ本心を言わない――いや、言えなかったのだろう。
メイの抱えていたものの重さを、物語っていた。
< 42 / 55 >

この作品をシェア

pagetop